いまなぜ都心部のマッチングの倍率が高いのか
〜「地元に戻りたい医学生」たちが、都会のマッチングを過熱させている現実〜
近年、東京・大阪・名古屋といった大都市圏の病院では、マッチングの倍率が異常に高騰しています。
市中病院でも大学病院でもフルマッチが当たり前で、「落ちるつもりなんてなかった」医学生がアンマッチするケースも珍しくありません。
その背景には、地元回帰志向の強い医学生の“都市集中現象”があります。これは一時的なブームではなく、すでに構造的な現象といってよいでしょう。
進学校の進路選択が変わった
2000年前後に生まれた今の医学生世代では、進路選択にある変化が起きていました。
かつて、都心の進学校に通う学力上位層は、東大・京大・一橋といった難関大学を志望するのが一般的でした。
しかし「医師になりたい」という職業志向に加え、私立医学部の高額な学費を避ける目的もあり、学費の安い地方の国公立大学医学部医学科を目指す人が多くなっています。
【データで見る】大阪の医学部進学者数の実態
たとえば2018年のデータをもとに、大阪の高校から医学部医学科に進学した人数を調べてみました(当社調べ/一部推計あり)。
| 高校名 | 医学部医学科合格者数(2018年) |
|---|---|
| 四天王寺高等学校(私立) | 61名 |
| 大阪星光学院高等学校(私立) | 39名 |
| 清風南海高等学校(私立) | 26名 |
| 清風高等学校(私立) | 22名 |
| 天王寺高等学校(公立) | 21名 |
| 北野高等学校(公立) | 20名 |
| 大阪桐蔭高等学校(私立) | 20名 |
| 高槻高等学校(私立) | 20名 |
| 明星高等学校(私立) | 12名 |
| 金蘭千里高等学校(私立) | 11名 |
| 大教大附属天王寺高校(国立) | 8名 |
| 三国丘高等学校(公立) | 7名 |
| 大教大附属池田高校(国立) | 6名 |
| 大手前高等学校(公立) | 6名 |
| 開明高等学校(私立) | 5名 |
| 関西創価高等学校(私立) | 5名 |
これらわずか16校だけで300名が医学部医学科に進学しています。
ここに大阪府内の他の高校や、灘高校・甲陽学院(兵庫)や東大寺学園・西大和学園(奈良)など大阪から通う生徒が多い近県の名門進学校を加えると、
「大阪出身で医学部に進学した人」は、少なく見積もっても年間400名以上いると考えられます。いると考えられます。
阪大・公立大では到底受け入れきれない
大阪府内にも医学部はありますが、たとえば大阪大学と大阪公立大学を合わせても、医学科の定員はせいぜい200人程度。
つまり、大阪出身で医学部を目指す受験生のうち、大多数は大阪以外の大学に進学しているのが現実です。
地方で学び、地元へ戻る流れ
こうして地方の国公立大学に進学した大阪出身の医学生たちは、6年間を地方で過ごします。
そして卒業が近づくと、
「やっぱり地元の大阪で働きたい」
「親も高齢になってきたし、そばにいたい」
「都市部の方が症例も多くて学びになりそう」
といった理由で、マッチングのタイミングで大阪に戻ってくる人が非常に多くなっています。
そして、倍率が跳ね上がる
全国の地方大学に散らばっていた「大阪出身の医学生」が、マッチング時期に一斉に大阪に殺到します。
しかも大阪でマッチングを争うのは、大阪出身者だけではありません。
地方の高校から阪大、公大、関西医大、近大、大阪医大などに進学し、「研修もこのまま大阪で続けたい」と希望する学生たちも多く存在します。
そのため、倍率が2倍3倍の病院も珍しくなく、競争は年々激化しています。
都心の“場所ブランド”が暴走気味に
そしてもう一つの現実。
実は、正直「僕だったらここで研修したくない」と思うような病院ですら、場所が“都心”というだけで人気になるケースもあります。
もちろんアクセスの良さは大切ですが、教育体制や研修内容が伴っていない病院まで高倍率になってしまうのは、健全とは言えません。
マッチングでは、「倍率が高い=いい病院」とは限らない。
“どこで働くか”ではなく、“誰と、どんな環境で学べるか”を見極める視点が、これからはより重要になってきます。
まとめ
- 都心の進学校出身者が地方の国公立医学部に進学する流れが定着している
- 大阪府内の医学部定員は限られており、多くは府外へ進学
- 地元に戻りたい医学生が大阪に殺到し、マッチング競争が激化
- 「都心にある」というだけで倍率が上がる病院もあり、注意が必要
次回予告:第3回ー基礎編ー 「アンマッチする人の特徴」
どんな人がアンマッチしやすいのか?学力?性格?立ち振る舞い? 200人以上の学生と接してきた視点から、「落ちやすいタイプの学生像」を具体的にお伝えします。